不安障害(不安神経症)とは
「不安」という気分は、ネガティブなイメージを抱かれがちですが、「安心」や「安全」を得るために欠かせないものでもあります。不安があるからこそ私たちは危険・危機を回避するために対策を講じたり、物事を回避することができるのです。
「不安障害」では、この不安という気分が過敏になり、本来であれば危険・危機と言えないものに対して対策を講じようとしたり、回避したりしてしまいます。そしてその過剰な心理や行動によって、日常生活に支障をきたします。
不安障害には、強迫性障害、パニック障害、社会不安障害、全般性不安障害など、いくつかの種類があります。
不安障害の種類
強迫性障害
ある1つの考えが頭に浮かぶと、その考えを打ち消す(打ち消して安心したい)気持ちが強くなり、実際に行動に移してしまう不安障害です。
典型例として、「自宅を出てから、ガスを止めたか/鍵を閉めたか/家電の電源を切ったか等が気になり、何度も帰宅する」というケースが挙げられます。仕事や約束に遅れたとしても、その考えを抱くこと・行動することをやめられず、人間関係に支障をきたします。
パニック障害
突然、何の予兆もなく強い不安に襲われ、動悸・震え・呼吸困難といったパニック発作を起こし、それが繰り返される不安障害です。このまま死んでしまうと感じるケースも見られます。
一度発作を起こすと、「また起こるのでは?」という不安が重なり、電車・エレベーターなど人が多く隔離された場所を回避する、人ごみに入れない、出社できないといった問題が生じることがあります。
社会不安障害
人前で恥ずかしい思いをすること、場合によっては単に注目されること・会食することに強い恐怖心を抱き、人前に出る・人が多い場所に行くことを回避しようとする不安障害です。
人前に出る時は誰でも多少の緊張をしますが、社会不安障害ではその程度が強く、手足のふるえ、動悸・息切れ、多量の発汗、赤面、声が出ないなど、人との関わりに支障をきたす症状が現れます。外出自体ができなくなるケースも見られます。
全般性不安障害
仕事、家庭、学校、またそこにいる人との関係など、日常生活におけるさまざまなことが気になり、過度の不安・心配に苛まれる不安障害です。
不安や心配に加え、じっとしていられない、疲れやすい、集中できない、イライラ、身体の緊張、不眠などの症状が見られます。
不安障害の主な原因
不安障害の原因については、未だはっきりとしたことが分かっていません。
現在のところ、精神的・環境的なストレス、遺伝、真面目・完璧主義・人見知りといった性格などが発症に影響しているのではないか、という指摘があります。
不安障害の主な症状
強迫性障害の症状
以下のような症状を繰り返し、日常生活(特に仕事・人間関係)に問題が生じます。
- ガスの止め忘れ、鍵の閉め忘れなどが気になり、何度も帰宅して確認する・約束に遅れる
- 汚れているという不安がぬぐい切れず、延々と手を洗う・何度もきれいな服を洗濯する
- 根拠なく、自分が犯罪をしてしまったのではと思い込む、新聞・ニュースなどでそれを確認する
- 明らかに不要であるものを捨てられず、自宅等が物であふれる
パニック障害の症状
突然、前触れなく以下のような症状に襲われます。またこのことにより、外出すること・電車やエレベーターなど閉鎖された空間を避けるようになります。
- 動悸
- 震え
- 呼吸困難
- このまま死ぬ、気が狂うという不安、恐怖
- めまい、吐き気
- 自分が自分でないような感覚
社会不安障害の症状
人前に立つ、会話・会食をする時などに、以下のような症状が現れます。またこのことにより、同じような場面を避けるようになります。
- 強い不安、恐怖心
- 手足のふるえ
- 動悸・息切れ
- 多量の発汗
- 赤面
- 声が出ない
- 頭が真っ白になる
- 頻尿
全般性不安障害の症状
持続的・慢性的に、以下のような症状が見られます。この状態が6ヶ月以上続いている場合に、全般性不安障害と診断されます。
- 不安、心配
- 落ち着かない
- じっとしていられない
- 焦燥感
- 身体の緊張
- 不眠
不安障害のセルフチェック
不安障害についての簡易的なセルフチェックです。当てはまる項目があり、気になる場合には、一度当院にご相談ください。

- 出社や登校、あるいは外出自体がひどく辛い
- さまざまな不安、心配が強くあり、
- まわりから「心配しすぎだよ」と指摘されるが、安心できない
- 人前に立つ、人と喋る時に声や手足の震えがある、冷や汗をかく、赤面する
- 電車、エレベーター、人ごみに恐怖心があり乗れない・近づけない
- イベント、人との約束が近づくと落ち着かない、体調が悪くなる
- 施錠などが気になり何度も帰宅し、仕事・約束に遅れてしまうことがよくある
- 手や服を洗っても汚れている気がして、何度も洗ってしまう
- うまく対応できるか不安で、自分が出るべき電話に出られない
- めまい、吐き気、動悸・息切れなどがあるが、検査では異常なしと言われた
- 1日の中で緊張している時間が長く、リラックスできない・辛い
不安障害の治し方
主に、薬物療法、心理療法を行います。
薬物療法
主に、抗うつ薬、抗不安薬などを使用します。抗うつ薬・抗不安薬にもさまざまな種類があり、患者さまの症状・体質に合ったものを選択・処方いたします。
「なかなか良くならないから」あるいは「もう良くなったから」と自己判断で使用を中止すると、症状が悪化する・ぶり返すことがあります。用法用量をお守りいただき、薬の内服中止・種類の変更・減薬などを希望される場合も、必ず医師にご相談ください。
認知行動療法
「自分は〇〇が苦手・下手」「〇〇の時に必ずこんな症状が出る」といったネガティブな考え・思い込みを検証し、誤ったものであればその認知を矯正するという方法です。
改めて振り返ってみると、「思っていたほど苦手・下手ではない」「必ずその症状が出るわけではない」というケースは少なくありません。
このような認知を正すことで、不安をはじめとする症状が和らぐ・物事に前向きに取り組めることが期待できます。