幻覚とは
幻覚・妄想は、ご自身では「確かに感じている」「確信している」という状態ですので、自分で自覚し、自分で受診できないということが少なくありません。
ご自身で少しでもおかしいなと感じた時には、重症化する前に、お早目に当院にご相談ください。
幻覚とは
幻覚とは、「実際にはないものを、感覚として感じられること」を指します。
分かりやすい幻覚としては、現実にはない音が聞こえる「幻聴」が挙げられます。統合失調症の方によく見られます。存在しないものが見える「幻視」は、アルコール依存症、認知症などに見られます。
被害妄想とは
妄想とは、「一般常識から考えると明らかに誤った考えを、確信して持つ」ことを指します。
強迫性障害では、何度洗っても自分の手や身体が汚れているような気がしてならない不潔恐怖という妄想が見られることがあります。
幻覚が見える・被害妄想が
止まらない原因
幻覚や妄想の原因は、その疾患によって異なります。
妄想性障害の原因
はっきりとした原因は解明されていませんが、遺伝的・環境的要因が発症に影響していると言われています。
統合失調症の原因
こちらも、はっきりとした原因は分かっていません。強いストレス、不安、薬の副作用が発症に影響していると言われています。
うつ病の原因
うつ病は、主にストレスを原因として発症することが分かっています。その他、几帳面・完璧主義といった性格、遺伝なども影響します。
強迫性障害の原因
強迫性障害の原因は、未だ解明されていません。現在のところ、真面目・神経質といった性格、家庭や学校で育まれた観念、環境的ストレス、遺伝などの影響が指摘されています。
認知症の原因
認知症の原因には、さまざまな病気があります。もっとも多いのがアルツハイマー病で、全体の約60%を占めます(アルツハイマー型認知症)。その他、脳梗塞・脳出血などを原因とする血管性認知症、レビー小体に特殊なたんぱく質が溜まるレビー小体型認知症、前頭葉・側頭葉が萎縮する前頭側頭型認知症などがあります。
依存症の原因
薬物・アルコールなどの物質への依存、ギャンブル・ゲーム・インターネットなどのプロセスへの依存が原因です。また、人間関係に依存するタイプもあります。
考えられる疾患
妄想性障害
妄想性障害は、被愛型、誇大型、嫉妬型、被害型、身体型などに分けられます。特定の人が自分に好意を寄せている、自分に飛びぬけた才能がある、恋人・配偶者が浮気をしている、自分が見張られている、自分の顔が醜い等の妄想が見られます。
統合失調症
幻聴および幻聴に対する独り言・ニヤニヤ、被害妄想、悪口を言われていると思い込む関係妄想、人とのすれ違いざまに攻撃を受けるのではないかという迫害妄想、誰かに尾行されているという追跡妄想など、幻覚(主に幻聴)、妄想が見られます。
うつ病
うつ病では、気分の落ち込み、関心・意欲の低下、不眠/過眠、イライラといった症状がよく知られています。これに加え、がんなどの重大な病気だと思い込む・必要以上にお金の心配をするといった微小妄想、あるいは幻覚といった症状が見られることがあります。
強迫性障害(不安障害)
強迫性障害は、不安障害のうちの1つです。何度手や身体を洗っても汚れているような気がする、鍵を閉め忘れた気がして何度も戻って確認する、自分が罪を犯したに違いないと思い込むなどの妄想をすることがあります。
認知症
認知症では、自分の物を盗まれた、家族に邪魔者扱いされている、医師や看護師に悪口を言われている、配偶者・パートナーが浮気をしているなどの妄想、いない人や物が見える幻視・幻聴などが見られます。
依存症
アルコール依存症、薬物依存症においては、意識がはっきりしている状態であっても、悪口を言われている、殺されるなどの妄想・幻覚(幻視など)を抱きます。その恐怖から、自傷行為、あるいは他害行為へと発展することもあります。
幻覚が見える人、被害妄想が
止まらない人の特徴
幻覚や妄想の原因となる各疾患の発症率の性差、発症しやすい年代は、以下の通りです。
また全体的には、真面目・几帳面である人、不安を感じやすい人は、幻覚・妄想などが起こりやすいと言えます。
- 妄想性障害においては、男女差がありません。比較的中高年での発症が目立ちます。
- 統合失調症の場合には、10代~20代での発症が目立ちますが、中年になってから発症することもあります。男女差はほぼありません。
- うつ病は、全年代において女性の割合が高くなります。男性は50代、女性は40代・60代がピークです。
- 強迫性障害に男女差はありません。ただし、男性の方が発症年齢は低い傾向にあります。全体のうち、過半数が18歳以下で発症しています。
- 認知症は高齢となるほど発症率が高くなります。現在、65歳以上の約16%が認知症を発症しています。
- アルコール依存症は、女性の場合は30代で、男性の場合は50代でピークを迎えます。患者数は男性の方が多くなります。
対処法・治す方法
妄想性障害、統合失調症、うつ病、強迫性障害、認知症の治療では、いずれも薬物療法を行います。また必要に応じて、精神療法・生活習慣指導などを導入します。
依存症の治療については、その原因によって異なります。薬物療法、カウンセリングや自助会のご案内を行います。