最近、「忘れ物が多い」・
「記憶力の低下」・
「思い出せない」などの
症状がある方へ
自律神経失調症は、自律神経の乱れによって、身体とこころにさまざまな症状が現れます。そのため、自覚症状を振り返ってみても、「何科を受診したらいいのか分からない」という方が少なくないようです。
他の病気にも言えることですが、まずは一番辛いと感じている症状を頼りに、診療科を選ぶことをおすすめします。こころの症状が辛ければ心療内科や精神科を、動悸がひどければ循環器内科を、下痢がひどければ消化器内科を、といった診療科の選び方です。
なお、ご自身が強いストレスを抱えていることを自覚している場合、ストレスと症状が連動していると思われる場合には、メンタルヘルスを専門とする心療内科・精神科の受診をおすすめします。
ご存じかもしれませんが、各医療機関・診療科は、必要に応じて随時連携します。医療機関・診療科選びに時間をかけ過ぎて受診・治療が遅れるということのないよう、過度に慎重にならず、早めに相談するようにしましょう。
このようなことでお困りではありませんか?

- 大切な書類を忘れてしまうなどのケアレスミスが多い、増えてきた
- 仕事や勉強に集中できないことがある/集中しすぎてまわりが見えなくなる
- 「忘れているよ」と指摘されても、何を忘れたのか分からない
- 会議、面接、試験など重要な予定をすっぽかしてしまう
- 会話中など、頭の中がぐちゃぐちゃになり、考えがまとまらないことがある
- マルチタスクが苦手で、仕事を並行して進められない
- 整理整頓が苦手で、デスク回り、部屋がいつも散らかっている
- 鍵、財布など大切なものをよく失くしてしまう
- 何度注意されても遅刻してしまう、寝坊してしまう
- 会議中、仕事中、授業中など、じっとしているべき場面でそれができない
- 人が喋っているのを遮り、話し始めてしまう
考えられる原因と疾患
注意欠如多動症(ADHD)
不注意、多動性・衝動性の症状が見られる発達障害です。具体的には、ケアレスミスが多い・忘れ物や紛失が多い・落ち着きがない・順番を守れないといったものが挙げられます。成長に従い、多動性・衝動性は軽減することが多いですが、不注意についてはしばしば残ってしまいます。注意欠陥多動性障害とも言います。
軽度認知障害(MCI)
認知症の一歩手前の状態を指します。記憶力・思考力といった認知機能が低下しているものの、日常生活にはほとんど支障をきたしていません。ただ、放置していると高確率で認知症へと進行します。MCIの段階で発見し、治療を開始することが、その後長い期間を穏やかに暮らす上で大切になります。
認知症
記憶力や思考力といった認知機能の低下によって、日常生活に支障が出る病気です。もの忘れの多発、感情の欠如、興味や関心の低下、幻覚、性格の変化(怒りっぽくなる・攻撃的になる等)といった症状が見られます。もっとも多いのが、アルツハイマー病を原因とするアルツハイマー型認知症です。
睡眠障害(不眠症)
寝つけない、夜中に目が覚める、朝早く目が覚める、熟睡できない等の、睡眠にかかわる障害の総称です。睡眠の質・量の不足によって、日中の眠気、倦怠感、記憶力の低下、イライラなどの症状が引き起こされます。うつ病とも深い関係があります。
うつ病
主にストレスを原因として発症する病気です。気分の落ち込みや憂うつ、意欲・関心の低下、集中力や記憶力の低下、不眠、倦怠感、疲労感など、さまざまな心身の症状を伴います。
年代別の物忘れや記憶力の低下の原因
(若年層)
20代・30代の場合
学業・仕事・家庭などにおいて、プレッシャーの多い時期です。20代では仕事を覚える・一人前になるための、30代では成果を出す・家族を支えるためのストレスによって、物忘れが増えたり、記憶力が低下したりといったことがあります。多くは一時的なものですが、うつ病などを予防するためにも、心身の疲弊には早めに気づき、しっかりと休む・リフレッシュすることが大切です。目まぐるしく環境が変わる年代であり、適応障害にも十分に注意しなければなりません。
その他、スマホ依存・ネット依存も、記憶力の低下につながることがあります。
(中年層)
40代・50代の場合
仕事・家庭・健康・介護問題などに関するプレッシャー、ストレスを感じることが多くなります。健康においては、生活習慣病や更年期障害と診断を受ける割合も高くなります。高血圧・糖尿病といった生活習慣病は、認知機能の低下につながる病気です。更年期を迎える女性も注意が必要です。
いわゆる中間管理職となる人も多く、一方で将来的な見通しが立たず不安を覚える人も少なくありません。仕事におけるストレスが20代・30代より大きくなり、これにより物忘れの増加を招くことがあります。
この年代の物忘れ・記憶力低下では、うつ病、睡眠障害が原因疾患となることが多くなります。
(高齢層)
60代以上の場合
若い頃と比べて、老化に伴う生理的な物忘れが増えます。一方で、認知症による物忘れを経験する人も確実に増えてきます。物忘れを指摘されても気づけない、物忘れが急激に増えてきたといった場合には受診が必要です。また意外に思われるかもしれませんが、うつ病の発症率が高いのも、この年代です。
健康問題を抱える人も、40代・50代より多くなり、高血圧・糖尿病などの予防・治療にはしっかりと取り組む必要があります。
忘れ物が多い・記憶力低下などを感じる方の特徴
忘れ物が多い、記憶力が低下している人には、以下のような特徴が見られることがあります。

- 同じことを何度も言う、同じ質問を何度もする
- 私物の置き忘れ、財布など大切な物の紛失が増える
- 仕事でケアレスミスが増える
- 慣れたはずの家事の手順が分からなくなる
- リモコンなど、これまで当たり前に使っていたものの使い方が分からなくなる
- 新しいことを覚えられない(昔のことはよく覚えている)
- 話が支離滅裂になる、つじつまが合わない
- ごく普通の会話の内容が理解できない、テレビドラマの内容が理解できない
気になる特徴がございましたら、お早目にご相談ください。
主な対策方法
休養・睡眠をしっかりとる
もっとも簡単で、高い効果が期待できるのが、脳と身体をしっかり休めることです。寝る時にはスマホなどを持たず、静かなリラックスできる環境で、質・量とも十分な睡眠を確保しましょう。
バランスの良い食事
栄養バランスの良い食事は、心身の健康に欠かせません。野菜・フルーツ、青魚、ナッツ類といった、抗酸化物質やオメガ3脂肪酸を豊富に含む食品は、脳の健康促進にも役立ちます。
適度な運動
適度な運動は、全身の血流、脳の血流を改善します。また、ストレスの解消、睡眠の改善にも役立ちます。
ストレスの解消
仕事、家事・育児などに時間をとられ、ストレスを解消する機会が少なくなっていないでしょうか。ストレスを溜めない・解消することは、認知機能の維持に役立ちます。
医療機関の受診
上記のような対策をしても改善しないといった場合には、当院にご相談ください。もちろん、対策を試す前に早めに受診してくださっても結構です。特に、物忘れなどの症状が日常生活に支障をきたしている場合には、早急な受診をおすすめします。