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ストレス障害(ASD・PTSD・適応障害)

ストレス障害とは

ストレス障害とはいつも機嫌よく明るい人を含め、私たちは誰でも、大なり小なりのストレスを抱えています。特に現代は社会構造・人間関係が複雑化し、より多種多様なストレス要因が存在します。
そういった中で、強いストレスによってこころのバランスを崩し、日常生活に支障をきたすということがあります。このような障害の総称が、ストレス障害です。
ストレス障害は大きく、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害、適応障害に分けられます。

ストレス障害の種類と特徴

急性ストレス障害(ASD)

事故・事件などに巻き込まれ、強いストレスを感じたために発症します。自分が巻き込まれた場合はもちろん、人が事故・事件に巻き込まれたのを目撃して発症することもあります。
慢性的な不安、原因となった事故・事件と似たシチュエーションにおける不安、自分が自分でなくなるような感覚、断続的な記憶の抜け落ちなどの症状が現れます。これらの症状は、原因となったできごとが強烈であるほど、強く現れます。
急性ストレス障害は、発症後1ヶ月以内に症状が落ち着きます。1ヶ月以上続くものは、心的外傷後ストレス障害に分類されます。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)の名前でよく知られたストレス障害です。
急性ストレス障害と同様、事故や事件に巻き込まれた・目撃したことで強いストレスが生じ、発症します。
症状としては、原因となった場面を何度も繰り返し思い出してしまう(フラッシュバック)、似たシチュエーションを回避するといったものが挙げられます。
多くの場合、ストレスを受けてから数週間後に発症しますが、何年も経過してから発症するケースも見られます。その後、上記のような症状が少なくとも1ヶ月以上、ほとんどの場合は長期にわたり、続きます。

適応障害

急性ストレス障害・心的外傷後ストレス障害とは異なり、日常生活を送る上でのストレスを原因として発症します。原因となるストレスはさまざまな形をとりますが、就職、転勤・配置転換、転職、結婚・離婚、就学・進学、引っ越しなど、生活環境の変化によって引き起こされるケースが目立ちます。
症状としては、不安、無気力、憂うつ、焦り、イライラ・攻撃性の高まりなどが挙げられます。うつ病との鑑別においては、攻撃性の高まりの有無がポイントとなります。ただ、適応障害を放置したためにうつ病に移行する、というケースもあります。

ストレス障害の主な原因

ストレス障害の主な原因ストレス障害の原因は、ストレスにあります。
急性ストレス障害・心的外傷後ストレス障害の場合は、事故・事件に巻き込まれる、あるいは目撃するといったことが原因となります。具体的には、暴力・人の死や怪我・戦争・交通事故・電車事故などが挙げられます。また、テレビやネット上の衝撃的、残酷な映像を見て発症するということもあります。
適応障害については、就職、転勤・配置転換、転職、結婚・離婚、就学・進学、引っ越しなど、生活環境の変化によって引き起こされるケースが目立ちます。結婚や昇進といった、一見するとポジティブな変化であっても、理想とのギャップやプレッシャーなどがストレスにつながることがあります。

ストレス障害の主な症状

急性ストレス障害・
心的外傷後ストレス障害の
症状

急性ストレス障害・心的外傷後ストレス障害の症状
  • 慢性的な不安
  • 原因となったできごとと似たシチュエーションにおける不安
  • 原因となったできごとと似たシチュエーションの回避
  • 自分が自分でなくなるような感覚
  • 断続的な記憶の抜け落ち
  • 原因となった場面を何度も繰り返し思い出してしまう(フラッシュバック)
  • 不眠症状、悪夢(原因となったできごとと関連した夢を見る)
  • 恐怖感、絶望感、悲壮感、怒り、罪悪感
  • イライラ、攻撃性、暴力性、軽快性
  • 集中力の低下
  • 音、人や物の動きに過敏になる など

適応障害の症状

適応障害の症状
  • 不安
  • 無気力
  • 憂うつ
  • 焦燥感、怒り
  • イライラ、攻撃性の高まり
  • 不眠 など

ストレス障害の診断

急性ストレス障害の診断

侵入症状・陰性症状・解離症状・回避症状・覚醒症状に分類される各症状のうち、9つ以上の症状が認められる場合に急性ストレス障害と診断されます。

心的外傷後ストレス障害の
診断

侵入症状が1つ以上、回避症状が1つ以上、解離症状・陰性症状が2つ以上、覚醒症状が2つ以上認められ、それらの症状が1ヶ月以上続いている場合に、心的外傷後ストレス障害と診断されます。

適応障害の診断

以下のすべてに該当する場合に、適応障害と診断されます。

  • 明確なストレスの原因があり、3ヶ月以内に症状が現れた
  • 著しい苦痛、生活への支障がある
  • 他の精神疾患、死別反応によるものではない
  • 原因となるストレスを取り除くと、6ヶ月以内に症状の改善が認められる

ストレス障害の治し方

急性ストレス障害の治療

ストレスの原因となったできごとを誰かに話し、おそろしさ・辛さなどを共感してもらうことが治療の基本となります。医師やカウンセラーだけでなく、家族、友人など、信頼できる人に頼りましょう。
また必要に応じて、鎮痛薬・催眠薬などを短期間処方します。
全体の約7割で、完治または改善します。症状が続き、心的外傷後ストレス障害へと移行するケースもあるため、経過観察が欠かせません。

心的外傷後ストレス障害の
治療

心的外傷後ストレス障害の治療では、心理療法が中心となります。あわせて、抗うつ薬、抗不安薬、精神安定薬といった薬による対症療法も行います。
適切な治療を行うことで、ほとんどのケースで以前の状態に戻すことが可能です。早期治療が大切ですので、気になる症状がある時・家族に受診をすすめられた時には、お早目に当院にご相談ください。

適応障害の治療

適応障害の治療では、ストレスの原因を取り除く心理療法が中心となります。具体的には、ストレスを与える人から離れる、仕事を休むといったことが挙げられます。
また症状に応じて、抗うつ薬、抗不安薬といったお薬も処方します。
適応障害は、原因を取り除くことで比較的短期間で症状の改善が見込めます。また、ストレスを完全に取り除けない(仕事を休めない等)場合も、時間の経過とともに慣れていき、症状が軽くなるということもあります。
ただし、だからといって一人で乗り切ろうとはせず、医師の治療・サポートを受けながら、適切に対処するようにしましょう。