緊張して、手・足・声が
震える、ドキドキ・バクバクが
止まらない方へ
人前に立った時、社会的地位の高い人と会った時、あるいは好きな人と一緒にいる時、緊張して手や足、声が震える、ドキドキ・バクバクが止まらないということがあります。
多くの場合、この緊張・症状は慣れによって軽減していきますが、「自分がおかしいのではないか?」と不安になっている方も多いようです。
このページでは、なぜそのようなことが起こるのか、考えられる疾患、対処法などについて解説いたします。
考えられる原因
その行動・場面に
慣れていないから
その人の性格、暮らし、あるいは仕事の内容によっては、普段あまり人と喋らないということもあります。近年は通信アプリ、チャットが普及し、全体的にも人と会う・喋る機会が少なくなっています。
慣れていない場面では、誰もが緊張し、人によっては手・足・声が震える、心臓がドキドキする・バクバクする可能性があるのです。強い恐怖心を抱くといったことがなく、次第に慣れていくようでしたら、過度に心配する必要はありません。
まわりからの視線・
評価が気になるから
視線、評価を気にしないという人はいません。特に多くの視線が集まり、そこで自分が何かをうまくしなくてはならないという場合には、緊張するのが普通です。適度な緊張感は、むしろ成功にとって欠かせないものです。
ただし、それも程度が過ぎると、社会生活に支障をきたします。何回やっても手足や声が震える、ドキドキ・バクバクが止まらないという場合には、一度ご相談ください。
大きな失敗をした経験が
あり、また失敗するのでは
という不安があるから
プレゼンで大きな失敗をした時など、次のチャレンジがこわくなるということは、多くの方が経験しています。失敗経験から学んで対策をたてる、練習をするといったことで、不安は和らぎます。経験を活かして成功できれば、その時の喜びもひとしおです。
ただし、逃げ出したくなるほどの恐怖心を抱いてしまう、何日も前からずっとそのことを心配しているといった場合には、無理にチャレンジを繰り返そうとせず、一度当院にご相談ください。
考えられる疾患
社会不安障害(あがり症)
人前に立つこと、注目を浴びることに強い恐怖心を抱き、手足の震え、動悸・息切れ、多汗、声が震える・出ない、赤面などの症状を引き起こします。こういったあがり症が認められる場合には、社会不安障害が疑われます。当院では、あがり症、社会不安障害を専門的に診療する「あがり症外来」を開設しております。
場面緘黙症(選択性緘黙症)
不安・緊張・恐怖などから、職場・学校といった特定の場所や場面で話すことができなくなる病気です。家庭、友人との集まりなど、リラックスできる環境であれば普通に喋れます。その他、お手洗いに立つことさえ躊躇う、受け答えができてもしどろもどろになる、恐怖心ですべきこと(上司への書類提出・同僚への確認など)ができない等の症状・特徴が見られます。
急性ストレス障害・
心的外傷後ストレス障害
過去に巻き込まれた事件・事故、あるいはその目撃によって強いストレスが生じ、その後繰り返しフラッシュバックが起こったり、不安、恐怖心などを感じる障害です。その症状の1つとして、手足の震えや動悸などがすることがあります。急性ストレス障害が1ヶ月以上続くと、心的外傷後ストレス障害となります。
適応障害
就職や転職、結婚・離婚、転居などで迎えた新しい環境に適応ができず、心身のバランスが崩れる病気です。不安や無気力、憂うつ、焦燥感、手足の震え、動悸、イライラ、攻撃性の高まりなどの症状が見られます。
不安障害
不安障害とは、過度の不安によって、本来であれば危険・危機とはいえない状況や物事に対して、過剰な対策を講じようとしたり、回避したりする障害の総称です。強迫性障害、パニック障害、社会不安障害、全般性不安障害などがあります。
パニック障害
突然、前触れなく強い不安に襲われ、動悸や手足の震え、声の震え、呼吸困難といったパニック発作が起こり、それが繰り返される不安障害です。「このまま狂ってしまう・死んでしまう」と激しい恐怖を感じることもあります。次の発作を予期し、電車やエレベーターなど隔離された空間に行くこと、あるいは外出自体を避けるようになります。
対処法
どんな時に症状が出るかを
書き出す
これまで、どんな時に症状が出たかを振り返り、紙に書き出すと、その傾向が見えてきます。そういった場面・状況を避けることで、症状が出る機会を減らすことができます。
ただし、社会生活を送る上で避けられない場面・状況もあります。避けられないことが辛い場合には、当院にご相談ください。
「緊張する=悪いこと」
という考えを改める
「人前に出るんだから緊張して当たり前だ」というふうに考えられると成功しやすく、「緊張する=悪いこと」という認知の改善に役立ちます。また適度な緊張は、パフォーマンスを向上させることが知られています。
深呼吸をする・水をひと口
飲む
手軽であり、誰にでもできる対処法です。緊張する場面・状況が近づいてきたら、深呼吸をしたり、水をひと口飲む習慣を身につけましょう。酸素をしっかりと取り込んで頭の回転を良くし、乾燥しがちな口内を湿らすことは、うまく話を組み立てる・受け答えする、しっかり発声することにつながります。
生活習慣の改善
翌日のプレゼンに備え、前日はしっかり寝るという方も多いでしょう。もちろんそれも大切なことですが、普段から生活習慣を改善しておくことで、より万全の体制で当日を迎えることができます。バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠をとり、体調が良い状態をキープしましょう。
「緊張しない」
「うまく喋る」ことを
目標にしない
人と話す時には、その人と仲良くなったり、何かを教えてもらったり、契約をとったりと、本来の目標があるはずです。多少緊張して声が震えた、ドキドキしてしどろもどろになったとしても、その目標を達成できればそれで良い、と考えましょう。成功体験は、たとえ小さなものでも積み重ねていくことが大切です。
トレーニングをする
緊張する場面を想定した発生・動作のトレーニングは、とても大切です。自分の部屋で鏡を見ながら練習する、先輩や友人に見てもらう、実際にその場所に行ってリハーサルをする等、ステップアップできれば理想的です。
心療内科・精神科を受診する
上記のような方法を試しても症状が改善しない、まったく慣れる気がしないという場合には、当院にご相談ください。症状・疾患ごとに、適切な治療、より具体的・効果的な対処法についてのアドバイスをいたします。
強い恐怖心・逃げ出したくなる・体調が悪くなるといった
時には早めのご相談を
初めはひどく緊張する場面・状況であっても、慣れることで、徐々に緊張は和らいでいきます。
ただ、その人、緊張の程度によっては、慣れる前にストレスが限界に達してしまうことがあります。
たとえば強い恐怖心を抱く場合、逃げ出したくなるような場合、体調が悪くなるといった場合には、お早目にご相談ください。
何らかの疾患が原因になっている場合には、頑張り過ぎることで症状が悪化するケースもありますので、決して無理はなさらないでください。