うつ病とは
「うつ病」は、気分障害の1つに分類される病気です。
気分の落ち込み、憂うつ、意欲・関心の低下、不眠、疲労感・倦怠感など、さまざまな心身の症状が現れ、日常生活に支障をきたします。
気分障害にはうつ病の他、躁病、躁うつ病(双極性障害)があります。
うつ病の主な原因
ストレス
うつ病の最大の原因といえるのが、ストレスです。私たちは大なり小なり、職場・学校・家庭などでストレスを感じながら生きていますが、その程度が限界を越えると、うつ病を引き起こします。
具体的なストレスとしては、人間関係がうまくいかない、仕事や勉強や子育てで感じる不安や緊張・過度のプレッシャー、金銭的な悩み、離婚、介護問題、自分の健康問題、健康やQOLを低下させる治療、大切な人やペットの病気や死などが挙げられます。
またストレスの感じ方は、人によって異なります。まわりからは些細な悩みに見えても、ご自身にとっては重大な問題となり、うつ病の原因となってしまうケースが少なくありません。
性格
几帳面、完璧主義、真面目、曲がったことが嫌い、人の評価が気になる性格は、ストレスの感受性を高める傾向があります。
こういった性格は、必要以上に物事に打ち込んで心身を疲弊させる、まわりの人と価値観が合わない・対立してしまうことが多くなるといった形で、その人にとってのストレスを増大させてしまいます。
まわりからは「頑張り屋さん」「努力家」「よく気がつく」「正義感が強い」といったように評価されている人も多く、そのことが余計に無理をしてしまう原因になることがあります。
遺伝
精神を安定させるセロトニンの分泌を調整する遺伝子によって、うつ病のなりやすさには一定の遺伝性が認められます。
二親等以内にうつ病患者がいる場合、そうでない場合と比べるとうつ病の発症率が2~3倍高くなると言われています。
うつ病の主な症状
うつ病になると、さまざまな心身の症状が現れます。
軽度・中等度・重度の段階に分けて、よく見られる症状をご紹介します。
軽度
- 面倒くさい、おっくうだと感じる場面が増える
- 意欲や関心の低下
- マイナス思考
- 自信喪失
- 罪悪感
- 疲労感、倦怠感
- 不眠
中等度
- 朝、身体が重くベッドから起き上がれない
- 遅刻が増える、無断欠席をする
- 休日に一日中寝込んでいる
- 食欲不振、食事を抜くことが増える
- 味覚障害
- 好きなもの・事が楽しく感じられない
- 入浴しない日が増える、何日も入浴しない
重度
- 出社、登校ができなくなる
- 食事を摂らないことによる体重減少、栄養失調
- 何日も入浴しない
- 強い自責の念、罪悪感
- 悲しいことがあったわけでもないのに、突然涙があふれる
- 死にたいと思う、自殺企図
- 妄想(自分が犯罪をしたに違いない、重大な病気であるに違いない等)
うつ病の初期症状について
初期には、憂うつ、意欲・関心の低下、マイナス思考、自信喪失、罪悪感、疲労感、倦怠感、不眠などの症状が見られます。
ただ、いずれも日常生活に大きな支障をきたすほどではないため、「ちょっと元気がないな」「疲れているのかな」といった程度に見え、受診に至らないケースが少なくありません。
うつ病になると、本来であればできる正確な判断が難しくなります。身近な人から「大丈夫?」と声をかけられた時には、いくら自分がうつ病ではないというつもりでも、念のために受診しておくことをおすすめします。
うつ病の人がとる行動の特徴
心身の症状によって、以下のような行動が見られます。自殺企図は重症例ですが、うつ病にはそのような危険性があるということを、一人ひとりが理解しておかなければなりません。
- 食事や入浴といった基本的なことができなくなる
- 遅刻の増加、無断欠席
- 休みの日に1日中寝ている
- 自殺企図
うつ病の診断について
普段の症状や日常生活での困難、診察時に認められる症状などをもとに、総合的に診断します。
うつ病は、躁うつ病(双極性障害)、統合失調症との鑑別も重要になります。鑑別は容易ではなく、経過を観察しながら、正確に見極めていくことが大切になります。
近年は、光トモグラフィー検査の活用も進んでおり、うつ病・躁うつ病・双極性障害のより正確な鑑別が可能になることが期待されています。
うつ病と診断された場合に「診断書」は作成して
頂けますか
休職する時・復職する時、行政の支援の申請を行う時などには、診断書を作成・発行します。
うつ病以外にも、双極性障害、発達障害、適応障害、自律神経失調症、不安障害、統合失調症など、必要に応じて診断書をお出ししますので、安心してご相談ください。
うつ病のチェックリスト
以下の項目のうち、「抑うつ気分」また「喜び・興味の著しい低下」を含む5つ以上に該当し、その状態が2週間以上続く場合に、うつ病と診断します。
うつ病になると、本来であればできる判断が難しくなります。親しい人から指摘された症状・行動などがあれば、診察の際に医師にお伝えください。
- 抑うつ気分
- 喜び・興味の著しい低下
- 気力の減退、疲労感
- 集中力・思考力の低下、決断や判断ができない
- 食欲不振と体重減少/食欲増加と体重増加
- 不眠/過眠
- じっとしていられない・動き回る・動作や話し方が遅くなる(精神運動の焦燥または制止)
- 自分に存在価値がないと感じる(無価値観)、過度または根拠のない自責の念
- 死ぬことを繰り返し考える、自殺企図
うつ病の治し方
うつ病の診断後には、主に以下のような治療を行います。
うつ病の治療には、時間がかかることを理解しておきましょう。これは、お薬を使った場合も同様です。また、良くなってきたからと無理をしてしまうと、症状が悪化する可能性も高くなります。
医師、家族と協力・相談しながら、治療を進めていくことが大切です。
十分な休養
仕事、勉強、家事などを休みます。時短勤務などで仕事が継続できることもありますが、場合によっては、休職・休学、入院が必要になります。
ただし、一日中寝ている、不規則な生活になるといったことは避けなければなりません。
薬物療法
抗うつ薬による治療が中心となります。症状・症例によっては、睡眠薬、抗精神病薬、抗不安薬なども処方します。
精神療法
医師との対話を通じて、うつ病に対する正しい知識を身につけたり、問題解決の糸口を掴んだりすることで、症状の改善、再発の防止を図ります。
うつ病と診断されても仕事はできますが無理はせず休息をとることをおすすめします
うつ病と診断されたからといって、必ずしも休職をしなければならないわけではありません。しかし、特に原因が仕事や職場での人間関係にある場合、以下のような何らかの対策は必要です。
- 短時間勤務をさせてもらう
- 責任の重い役職から外してもらう
- 短いスパンの仕事を1つずつやり切る
- 仕事の内容によっては同僚に代わってもらう
- 自宅でのリモートワークをさせてもらう
いずれの場合も、職場の理解・協力は不可欠です。診断書が必要な場合には、速やかに作成・発行いたします。
早急な退職の決断は
おすすめしません
うつ病の方は、こころの症状によって、適切な判断をすることが難しくなってしまいます。そのため、退職などの重大な決断を早急に行うことは基本的におすすめしません。経済的な不安によって、さらにストレスが大きくなってしまうこともあります。
これは、離婚、退学などにおいても同様です。